相続放棄したのに家の管理が必要?知っておきたい注意点

相続放棄をすると住んでいる家はどうなるのか。
自分は相続しないつもりでも、家族との関係や家の管理、将来の暮らし方など、不安は尽きないものです。
特に、相続トラブルや遺産分割で話し合いが長引いていると、感情面の負担も大きくなりがちです。
そこで本記事では、相続放棄と不動産の関係を、自宅が持ち家の場合と賃貸住宅の場合とに分けて整理しながら、住んでいる家がどうなるのかをわかりやすく解説します。
あわせて、相続放棄後に家の管理義務や空き家リスクをめぐるトラブルを防ぐための具体的な手順も紹介します。
これから相続放棄を検討している方はもちろん、すでに手続き中で不安を抱えている方も、住まいの将来を冷静に考えるための参考にしてください。

相続放棄しても住んでいる家はどうなる?

相続放棄をすると、法律上は初めから相続人でなかったものとみなされるため、被相続人の財産も借金も一切受け継がないことになります。
この効果は民法に定められており、相続放棄が家庭裁判所に受理されることで確定します。
そのため、被相続人名義の不動産についても、原則として所有権は引き継がず、他の相続人や相続財産清算人などが承継することになります。
ただし、相続放棄をしたとしても、家に住み続けている場合には、別の観点から一定の責任が残る点に注意が必要です。

民法940条では、相続放棄をした人であっても、その放棄の時点で相続財産を現に占有しているときは、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を自己の財産と同じ注意で保存しなければならないと定められています。
この規定は2023年の民法改正で見直され、管理義務の対象が「放棄時に現に占有している財産」に限定されました。
つまり、相続放棄そのものにより家の所有権は失っても、実際に住み続けている以上は、雨漏りや破損の放置などにより近隣へ損害が及ばないよう、最低限の管理を行う義務が生じると考えられます。
相続放棄後の生活を考えるうえでは、この保存義務の範囲を理解しておくことが重要です。

相続放棄後も住み続ける場合、居住者は所有者ではないものの、現に家を占有している立場として、鍵の管理や建物の維持など保存的な管理を求められる可能性があります。
一方で、家を出てしまい、鍵も返還するなどして占有を手放せば、新しい占有者や相続財産清算人などに管理が移り、自らの保存義務は原則として終わると整理されています。
もっとも、誰も管理しないまま空き家状態になると、老朽化や倒壊による近隣トラブルなどが発生し、結果として責任の所在が問題になることもあります。
そのため、住み続けるのか退去するのかを決める際には、家と相続トラブルの両方の観点から慎重に検討することが求められます。

選択肢 家の法的な位置づけ 想定される管理上のポイント
相続放棄後も住み続ける 所有権は承継せず占有者の立場 保存義務を意識した適切管理
相続放棄後に退去する 占有を手放し管理者を交代 鍵や書類の引継ぎ対応
誰も住まず空き家にする 所有者不明・管理不明確の恐れ 老朽化や近隣トラブルの危険

自宅が持ち家の場合の相続放棄と管理義務

被相続人名義の持ち家に同居していた相続人が相続放棄をすると、その人は法律上の相続人ではなくなり、登記名義も引き継がない扱いになります。
そのため、相続放棄をした人が単独で家を売却したり、担保に入れたりすることはできなくなります。
一方で、相続放棄をしても、放棄時点で家を現に占有している人には、一定の管理・保存義務が残る点に注意が必要です。
自宅が持ち家である場合は、「権利は引き継がないが、当面の管理は任されている」という位置づけを意識しておくことが大切です。

民法第940条第1項では、相続放棄をした人であっても、放棄時に相続財産を現に占有している場合には、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで自己の財産と同一の注意をもって保存しなければならないと定められています。
令和5年の民法改正により、「現に占有している者」に管理義務を限定することが明確化され、鍵を持っているかどうかや、実際に居住しているかといった事情が重視されるようになりました。
もっとも、この保存義務は、建物を壊したり劣化を放置したりしないといった、現状維持のための最低限の注意を求めるものと解されています。
固定資産税については、あくまで登記上の所有者に課税されるため、相続放棄をした人個人に新たに課税されるわけではありませんが、実務上は他の相続人との負担調整が問題になることがあります。

相続放棄をした後、自宅に住み続ける場合には、鍵の管理や雨漏り・雑草への対処など、自己の家と同程度の点検や修繕を行うことが求められます。
その一方で、誰も住まなくなった持ち家を長期間放置すると、老朽化や倒壊の危険が高まり、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、自治体から助言・指導、勧告、命令、代執行といった行政措置を受けるおそれがあります。
特に、倒壊や落下物により近隣に被害が出た場合には、民法上の不法行為責任が問題となり、損害賠償請求を受ける可能性も否定できません。
そのため、他の相続人や選任された相続財産清算人と早めに連絡を取り、引き渡しや処分方針を共有しておくことが重要です。

場面 相続放棄後の立場 主な注意点
自宅に住み続ける場合 占有者として保存義務 鍵管理・簡易修繕の継続
誰も住まない空き家 相続財産として管理対象 老朽化・倒壊リスク対策
相続財産清算人へ引継ぎ 保存義務の終わりに向け移行 早期の連絡と明確な引渡し

賃貸住宅に住んでいる家を相続放棄したとき

まず、賃貸住宅に住んでいる場合でも、亡くなった方が借主として締結していた賃貸借契約上の賃借権は、原則として相続の対象になるとされています。
そのため、相続人が家庭裁判所で相続放棄をすると、亡くなった方の債権や債務と一体のものとして、賃借権も承継しない扱いになります。
一見すると「部屋はそのまま借りられるのではないか」と感じやすいのですが、法的には借主としての地位が相続されない点を押さえておく必要があります。
このように、相続放棄を選ぶときは、預貯金や借金だけでなく、賃貸契約の扱いも一緒に見ておくことが大切です。

次に、相続放棄をしたあとも賃貸住宅に住み続けたい場合は、大家と新たに賃貸借契約を結ぶ必要があるのが一般的です。
この際、相続放棄前に発生していた家賃の滞納分については、原則として相続人は責任を負わない一方で、相続放棄後に居住を続ける期間の家賃は、新たな契約に基づき支払う義務が生じます。
また、大家の側が新たな契約を希望しない場合、相続放棄をした相続人が借主としての地位を当然に引き継げるわけではないため、住み続けることが難しくなる可能性があります。
そのため、相続放棄を検討する段階で、大家との話し合いや今後の契約方針について早めに確認しておくことが重要です。

さらに、相続放棄後に退去を求められたときには、まず賃貸借契約書を見直し、契約名義人や更新の条件、連帯保証人の有無などを整理することが大切です。
そのうえで、退去の期限や原状回復の範囲、敷金精算の方法など、実務上の取り決めを大家と書面で確認しておくと、後々の行き違いを防ぎやすくなります。
また、相続放棄を選ぶ前には、賃貸借契約が定期借家契約かどうか、更新の可否や期間、解約の条件など、契約の種類ごとのルールも確認しておくと安心です。
このように、退去の可能性も含めた具体的な条件を事前に把握しておくことで、住まいと相続の両面で慌てずに対応しやすくなります。

確認すべき契約内容 相続放棄前の着眼点 相続放棄後の対応方針
契約名義人と契約期間 誰が借主かと更新時期の確認 新規契約の要否と時期検討
家賃と滞納状況 滞納有無と金額の把握 相続放棄後の支払範囲整理
退去と原状回復条件 解約予告期間と負担範囲 退去期限と精算方法合意

相続放棄後に家を巡るトラブルを防ぐ具体的な手順

相続放棄を検討するときは、最初に誰が相続人になるのかを冷静に確認することが大切です。
そのうえで、自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則3か月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う必要があります。
期間内に判断が難しい場合には、家庭裁判所へ期間伸長の申立てができる場面もありますので、早めに情報収集を進めることが重要です。

相続放棄をしても不動産が残る場合、利害関係人などから家庭裁判所へ相続財産清算人の選任申立てが行われることがあります。
相続財産清算人は、裁判所の監督の下で不動産を含む遺産を整理し、換価や債務弁済などを進める役割を担います。
また、相続登記の申請義務化により、不動産を相続により取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があり、過去の相続についても一定の期限が定められているため、放置しない対応が求められます。

相続放棄後に不動産を放置すると、管理不全の状態となり、空き家対策特別措置法に基づき市区町村から指導や勧告等を受けるおそれがあります。
最悪の場合には、固定資産税の負担増や行政代執行による除却費用の請求など、思わぬ負担が生じる可能性もあります。
そのため、早い段階から専門家や不動産会社へ相談し、相続財産清算人による売却や活用、管理方法などを含めて、住んでいる家の今後を具体的に検討しておくことが有効です。

手順 目的 主なポイント
相続人と期限の確認 相続放棄判断の準備 3か月以内の申述
相続財産清算人の検討 不動産を含む遺産整理 家庭裁判所へ申立て
登記と空き家対策 所有者責任の明確化 相続登記と適正管理

まとめ

相続放棄をしても、住んでいる家の扱い方を間違えると、思わぬトラブルや負担が残るおそれがあります。
持ち家か賃貸か、誰が現に住んでいるのかで、管理義務や住み続けられる条件は大きく変わります。
相続人の範囲や期限、家の名義や契約内容を早めに確認し、法的な手続きとあわせて整理することが大切です。
当社では、相続放棄後の自宅や賃貸物件について、不動産の専門家としてわかりやすくご説明し、具体的な対応策まで一緒に考えます。
住んでいる家をどうするか不安を感じたら、ひとりで抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。

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