- 実家の売却でかかる税金は「譲渡所得税・住民税」「印紙税」「登録免許税」の3つ
- 相続した実家を売る場合、使える主な特例はマイホーム特例、空き家特例、小規模宅地等の特例、取得費加算の特例の4つ
- 相続前に売るか、相続後に売るかで、使える特例や有利さが変わる
親から実家を相続すると、まず直面するのが名義変更の手続きです。そのうえで、実家の売却を選ぶ場合、次に気になってくるのが税金の存在ではないでしょうか。
実は、実家の売却にかかる税金は、種類はそれほど多くありません。しかし、物件を相続前に売るか相続後に売るかによって、使える特例や有利さが変わってくるので注意が必要です。
この記事では、実家の売却でかかる税金の全体像から、活用できる特例、見落としがちな注意点をまとめて解説していきます。
実家の売却にかかる税金
実家の売却でかかる税金は主に4つ
実家を売却する際、まず押さえておきたいのが税金の全体像です。相続した実家を売却する場合、かかる税金は大きく分けて以下の4種類になります。
- 相続税:実家を含む財産を相続した際にかかる(基礎控除を超える場合のみ)
- 譲渡所得税・住民税:売却によって利益が出た場合にかかる
- 印紙税:売買契約書の作成時にかかる
- 登録免許税:相続登記や抵当権抹消の登記時にかかる
このうち相続税は「財産を受け継いだこと」に対する税金であるのに対し、残り3つは「売却する」という行為そのものに対してかかる税金です。
まずは相続税から見ていきましょう。
相続税
相続税は、実家を含めた遺産の総額が一定額を超える場合にかかる税金です。この一定額を「基礎控除」と呼び、次の式で計算します。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が2人であれば、基礎控除額は4,200万円です。遺産総額がこの範囲に収まっていれば、相続税は発生しません。
ここでいう遺産総額には、実家などの不動産だけでなく、預貯金や有価証券なども含まれます。
また、相続税が発生する場合、申告と納税の期限は「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」になります。
譲渡所得税・住民税
譲渡所得税は、実家の売却によって得た利益(譲渡所得)に対して課される税金です。譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
税率は、実家の所有期間によって大きく変わります。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年を超えていれば「長期譲渡所得」として扱われ、それぞれ次の税率が適用されます。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下)の場合の税率:
所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%=39.63% - 長期譲渡所得(所有期間5年超)の場合の税率:
所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%
「復興特別所得税」は、東日本大震災の復興財源として令和19年(2037年)まで課される税金で、所得税額に対して2.1%を掛けて計算されます。
所有期間が5年を境に、税率がおよそ2倍近く変わる点は覚えておきましょう。
印紙税
印紙税は、売買契約書を作成する際にかかる税金です。
契約書に記載された金額に応じて税額が決まっており、現在は軽減措置により本則よりも低い税額が適用されています(令和9年3月31日までに作成される契約書が対象)。
実家の売却でよくある価格帯の目安は、以下の通りです。
| 契約金額 | 印紙税額(軽減後) |
|---|---|
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
例えば、実家が2,000万円で売れた場合の印紙税は、10,000円です。
なお、契約書は売主・買主それぞれが1通ずつ用意するのが一般的で、双方がそれぞれの印紙税を負担する形になります。
登録免許税
登録免許税は、不動産の名義を変更する登記や、抹消登記にかかる税金です。
実家を相続した場合、まず相続登記(名義変更)が必要になり、この際の税率は固定資産税評価額の0.4%とされています。
相続登記には、次の2つのケースで登録免許税が免税になる措置があります(いずれも令和9年3月31日までの登記が対象です)。
- 土地の評価額が100万円以下の場合
- 相続人が登記を受ける前に亡くなっていた場合
いずれも土地のみが対象で、建物の相続登記は免税措置の対象外です。免税の要件は細かく定められているため、該当するかどうかは登記を依頼する司法書士へ確認するとよいでしょう。
実家の売却で使える4つの特例
知っておきたい4つの特例
実家の売却では、要件を満たせば税負担を軽減できる特例がいくつか用意されています。まずは全体像を一覧で確認しましょう。
| 特例 | 使えるタイミング |
|---|---|
| マイホームを売ったときの特例 (3,000万円控除) |
相続前・後どちらでも |
| 空き家特例 (被相続人居住用財産の3,000万円控除) |
相続後のみ |
| 小規模宅地等の特例 | 相続後のみ (相続税側の特例) |
| 取得費加算の特例 | 相続後のみ (空き家特例と併用不可) |
このように、相続前に売却する場合と相続後に売却する場合とでは、使える特例の種類が異なります。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
マイホームを売ったときの特例(3,000万円控除)
実家がマイホーム(居住用財産)に該当する場合に利用できる特例です。
譲渡所得から最高3,000万円までを控除でき、譲渡所得が3,000万円に満たない場合は、控除額が譲渡所得の金額を上限とします。
所有期間の長短は問われないため、短期譲渡所得・長期譲渡所得のどちらにも適用できる点が特徴です。
対象となる家屋・敷地
- 現に自分(または親)が住んでいる家屋
- 以前住んでいた家屋(住まなくなった日から3年目の年末までに売る場合に限る)
- 上記の家屋とあわせて売る敷地や借地権
- 家屋を取り壊した後の敷地(取り壊しから1年以内に譲渡契約を結び、かつ住まなくなった日から3年目の年末までに売ること。更地にしている間、駐車場など他の用途に使っていないこと)
適用できないケース
- この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 新居を建てる間の仮住まいなど、一時的な目的で住んでいた家屋
- 別荘のように、主に趣味・娯楽・保養のために所有している家屋
- 親子・夫婦など「特別の関係がある人」に売った場合
- 売却した年の前年・前々年に、同じ特例やマイホーム買換えの特例をすでに受けている場合
この特例は、相続前に親が売却する場合でも、相続後に子が売却する場合でも利用可能です。
空き家特例(被相続人の居住用財産の3,000万円控除)
被相続人が相続前に一人で住んでいた実家を、相続後に空き家として売却する場合に使える特例です。譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。
対象となる家屋の条件(すべて満たす必要あり)
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物(分譲マンション等)ではないこと
- 相続開始の直前において、被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと
なお、被相続人が要介護認定を受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になります。
売却時に満たすべき条件
- 相続時から売却時まで、事業用・貸付用・居住用として使っていないこと
- 売却時点で一定の耐震基準を満たしているか、取り壊してから土地を売ること(更地にする場合は、取り壊しから1年以内に譲渡契約を結ぶこと)
- 相続開始日から3年目の年末までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものではないこと
2024年改正のポイント
2024年(令和6年)1月1日以後の譲渡から、以下の2点が変わりました。
- 控除額の変更:家屋・敷地を相続した相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり2,000万円になる(2人以下なら従来通り3,000万円)
- 要件の緩和:譲渡後、翌年2月15日までに買主が耐震改修または取り壊しを行った場合も、特例の対象になった
相続人の人数や、耐震基準を満たすかどうかで適用条件が変わってくるため、事前に確認しておくと安心です。
小規模宅地等の特例
これは譲渡所得税ではなく、相続税を軽減するための特例です。被相続人が住んでいた宅地(特定居住用宅地等)について、一定の要件を満たすと、330㎡までの部分について相続税の評価額を80%減額できます。
誰が取得するかによって、要件が変わる
- 配偶者が取得する場合:特に要件はなく、無条件で適用される
- 同居していた親族が取得する場合:相続税の申告期限まで住み続け、かつその宅地を保有し続けることが条件
- 同居していなかった親族が取得する場合(いわゆる「家なき子」特例):被相続人に配偶者も同居親族もいないことに加え、相続開始前3年以内に自分名義や近い親族名義の家に住んでいないなど、複数の要件をすべて満たす必要がある
「家なき子」特例は要件が特に細かく定められているため、該当しそうな場合は個別に確認が必要です。
空き家特例との併用について
小規模宅地等の特例は、空き家特例と併用することも理論上は可能です。
ただし、これが認められるのは、先述した「家なき子特例」を満たす親族が実家を相続したうえで、空き家特例の厳しい要件もすべてクリアした場合などに限られます。
取得費加算の特例
相続税を納めた人が、一定期間内に相続財産を売却した場合に使える特例です。
納めた相続税額の一部を取得費に加算できるため、譲渡所得が減り、結果として税負担を抑えられます。
適用を受けるための3つの要件
- 相続または遺贈により、その財産を取得した人であること
- その財産を取得した人に、相続税が課税されていること(相続税がゼロの場合は対象外)
- 相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに、その財産を譲渡していること(相続開始から3年10か月以内が目安)
加算できる金額の考え方
加算できるのは、その人が納めた相続税額のうち、譲渡した財産に対応する部分に限られ、財産ごとに個別に計算します。
実家以外にも預貯金や株式などを相続している場合、相続税額の全額をそのまま実家の取得費に上乗せできるわけではなく、実家の相続税評価額が遺産全体に占める割合に応じた金額が加算対象になる、とイメージしておくとよいでしょう。
なお、加算できる金額がこの特例を使わずに計算した譲渡益を超える場合は、譲渡益相当額が上限となります。
空き家特例との関係
この特例と空き家特例は同時に使うことができません。どちらを選ぶべきかはケースによって有利・不利が分かれるため、判断に迷う場合は税理士へ相談することをおすすめします。
相続前or相続後|
売却のタイミングで税金は
どう変わる?
相続前売却と相続後売却、どちらが得か
実家の売却は、親の生前に行うか、相続後に行うかによって、税金面での有利さが変わります。判断のヒントになるのは、主に次の3点です。
- 相続税が発生する規模の財産かどうか
- 相続人が複数いて、分割協議が難航しそうか
- 親の判断能力(認知症等)に不安がないか
一つの目安になるのが、相続税が発生する規模の財産かどうかという点です。
相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、財産の総額がこの範囲に収まる場合は、相続税自体が発生しません。
この場合は、無理に相続後の特例にこだわらず、状況に応じて相続前・相続後どちらのタイミングでも売却を検討しやすいでしょう。
一方、相続税が発生しそうな規模の財産であれば、相続後に売却したほうが有利になるケースが多くなります。
小規模宅地等の特例や取得費加算の特例など、相続後にしか使えない制度を活用できるためです。
相続人が複数いる場合の考え方
実家のような不動産は、現金と違って公平に分けにくい財産です。
相続人が複数いる場合、遺産分割協議で意見がまとまらず、トラブルに発展することも少なくありません。主な選択肢は次の2つです。
- 生前に売却して現金化:相続時の分配をスムーズにしたい場合に有効
- 相続後に売却し「換価分割」:相続人全員が納得した上で、売却代金を分け合う方法
どちらが望ましいかは、家族間の関係性や財産の内容によって変わってくるため、早い段階で話し合っておくことをおすすめします。
親の判断能力にも注意が必要
実家の所有者である親が認知症などで意思表示が難しい状態になると、たとえ実の子どもであっても、代わりに売却手続きを進めることはできません。
将来的にそうした事態が想定される場合は、次のような仕組みを事前に検討しておくと安心です。
- 家族信託:判断能力があるうちに、財産管理を家族に託しておく方法
- 成年後見制度:判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選任する方法
相続した実家売却時に
見落としがちな注意点
相続登記をしないと売却できない
相続した実家を売却するには、まず名義を親から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。この手続きが済んでいない状態では、売却を進めることができません。
- 2024年4月1日から相続登記が義務化
- 相続を知った日から3年以内に登記が必要
- 期限を過ぎると10万円以下の過料の可能性
注意したいのは、過去の相続も対象になる点です。2024年4月1日より前の相続であっても義務化の対象となり、その場合の期限は2027年3月31日までとされています。
なお、遺産分割協議がまとまらず期限内の登記が難しい場合は、「相続人申告登記」という簡易な手続きでひとまず過料を回避できます。
ただし正式な相続登記の代わりにはならないため、後日あらためて手続きが必要です。
取得費が分からない場合は
売却額の5%」で計算
譲渡所得を計算するには、実家を購入した当時の金額(取得費)が必要です。しかし相続した実家では、購入時の契約書が残っておらず、取得費が分からないケースも珍しくありません。
- 取得費が不明な場合、売却金額の5%を取得費として計算
- 例:2,000万円で売却→取得費不明なら100万円として計算
- 実際の取得費が5%を上回っていても、根拠(契約書等)がなければ5%相当額しか計上できない
取得費が少なく計算されるほど譲渡所得が大きくなり、税負担も増えてしまいます。
まとめ
実家の売却を検討する際は、税金の仕組みと特例を正しく理解しておくことで、余計な負担を避けられます。最後に、この記事の要点を振り返っておきましょう。
-
かかる税金は主に4種類
実家の売却にかかる税金は、譲渡所得税・住民税、印紙税、登録免許税の3つが基本です。加えて相続した実家の場合は、別途で相続税が絡むケースもあります。 -
特例は要件と期限の確認が欠かせない
マイホーム特例、空き家特例、小規模宅地等の特例、取得費加算の特例と、使えるタイミングや併用可否がそれぞれ異なります。 -
「いつ売るか」も税負担を左右する
生前売却か相続後売却か、財産の規模や相続人の人数によって有利さが変わるため、早めに方向性を検討しておくと安心です。
税金や特例の判断に迷ったときは、税理士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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